震災で失なわれた賑わいを、ギャラリー再生のプロジェクト@福島県双葉郡(2019年6月~9月)

overview

2011年の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故の爪痕が残る、福島県富岡町夜ノ森地区。帰還困難区域からわずか数十メートルといったこのエリアには、震災前、家具の展示とイベントスペースとして活用されていた「ギャラリーそら」がありました。無垢の木材をふんだんに使用した空間の再活性化案の検討を、お隣の浪江町に本社を構える住宅会社より依頼されたのは、少しずつ町の復興が進んできた、2019年6月のことでした。

step1

原発事故からの日常を取り戻しつつあった富岡町ですが、当時、帰還者や移住者を含めても震災前の五分の一程度の定住人口といった、特殊な市場でのプランニングとなるため、まずは、現地、富岡町で、震災復興に携わるキーマンへのヒアリングを含めた、現地調査を始めました。

最初に、お会いしたのは富岡町の外郭団体でもある、とみおかプラス事務局長の佐々木邦浩氏。とみおかプラスの役割として、住民の避難先を確保するステージから、新たなまちづくりの支援をするステージに移行してきていること、それを踏まえて、空き家マッチングや、地元でのお祭りをコーディネートしている活動状況などを聞かせて頂き、最後に、夜ノ森ギャラリーの活用につながる意見交換をおこないました。

女性の方がくつろいだり、会話する場所が富岡町にはほとんどなく、特に子育て女性の方が安心していられる場所への要望が高いこと。また、上質な家具が展示されていたことら、町民の心を癒すことにもつながるような、アートのイメージのする場所への活用を期待したい、との提言を頂きました。

二人目に訪問したのは、カフェ135(コミュニティスペースの、ふたばいんふぉを併設)を経営する、平山勉氏。平山さんは、カフェの他、実家であったホテルの経営や、双葉郡の復興活動を横断的に行う双葉郡未来会議を運営するなど、震災復興のキーマンとも呼べる方です。当日は、夜ノ森のギャラリーの飲食事業の可能性を中心にヒアリングをしましたが、集客施設を考える上で、町内唯一の商業施設・さくらモールに行動が集中、それ以外の場所への広がりがないことが最も大きな課題。その解決策として、学生を絡めた飲食事業の展開案や、原点に帰って、いっそのこと住宅展示場を積極展開したらどうかと、地元の事業家ならではの、柔軟なアイディアを意見交換させて頂きました。

ざっくばらんに意見交換をさせていただこうと、富岡町役場勤務の職員の方々と夕食をともにしながらの懇親会も行いました。そのほかにも、富岡町近隣の施設に話をうかがいに行ったり、震災復興の過程で行われた数々の取り組みを調べたりしながら、理解を深めました。

step2

集めた意見や情報をもとに、小さな広場メンバーで喧々諤々の意見交換を踏まえ、最終的に提案を2つにまとめました。一つは地元での欠落機能で、地元の女性の方々からも期待感の大きい「ベーカリーショップ誘致案」、二つ目は、富岡での未来を担う人材の起業応援基地になるための「チャレンジショップ運営案」です。また、見ることから理解を深め、自分事にしてもらうためにも、帰宅困難エリアの境界が見渡せるカフェ案をいずれにも付け加えました。この場は、都市部の企業等の研修活用を想定しました。

現在

小さな広場への依頼は、再活性化案の提案まででしたが、現在、依頼元の住宅会社の本業ともつながる家具ギャラリーの復活案をコアに、私共の提案の要素を取り入れた複合形態のプラニンニングが進行中だと聞いています。震災復興からの新たな拠点となることを期待しつつ、私たちもリニューアル・オープンの時を待つばかりです。


0コメント

  • 1000 / 1000